2021年の1月、私は貯金のほとんどを投資に回しました。手元に残したのは現金で1年分の生活費だけです。その1年前、私は1,000万円を前にして、まったく動けずにいました。何が変わったのか。振り返ると、それは金額の問題ではありませんでした。

この記事で書くこと
  • 2020年まで私が止まっていた理由と、それが外れたきっかけ
  • 現金をいくら残して、あとをどう振り分けたか
  • 全部入れたあとの2年間で、実際に起きたこと

2020年当時、私は1,000万円を前にして動けなかった

前回の話を少しだけ振り返らせてください。

1,000万円が普通預金で眠っていた頃、私を止めていたものは2つありました。大きな数字を動かしたくないという気持ちと、FXで100万円を溶かした記憶です。投資という言葉が、私の中ではほとんどギャンブルと同じ意味になっていました。

そのあと気持ちは固まったものの、いきなり1,000万円を動かすのはやっぱり無理でした。そこで選んだのが、月に数万円の積立から始める入り方です。当時のつみたてNISA(今でいう旧NISA)は年間の上限が 40万円。1,000万円のうち、まずは数パーセントだけ。制約だらけの制度でしたが、そのときの私にはちょうどよかった。

その積立を1年ほど続けて、手応えのようなものは出ていました。毎月コツコツ買ったものが、じわじわ増えている。投資=ギャンブルという思い込みは、この1年でだいぶほどけていました

ただ、それと「貯金のほとんどを入れる」のは、まったく別の話です。

背中を押したのは、友人の何気ない一言

きっかけは、友人たちと話していたときのことでした。

そのうちのひとりが、個別株で2,000万円になったという話をしていました。私は素直に、うらやましいと思いました。自分がつみたてNISAで月数万円をコツコツやっている横で、そういう世界があるのか、と。

そこへ、もうひとりの友人が言いました。

「失敗したらなくなるじゃん」

それに対する、当人の返事がこれでした。

「別に働いてるから、仮に0円になっても問題ない」

これは「お金がなくなってもかまわない」という意味ではありません。働いて収入がある限り、最悪の事態になっても生活が立ち行かなくなるわけではない、という話です。仕事という土台があるから、そのうえに乗せた分については覚悟が決められる。そういう意味の言葉でした。

極端な話だとは思います。それでも、そういう考え方で投資をしている人が実際にいると知ったことは、私にとって小さくない出来事でした。

私自身、FXで100万円を溶かした経験があります(その話はこちら)。だからこそ「失敗しても働いていれば生きてはいける」という言葉が、他人事ではなく実感として入ってきたのかもしれません。実際、溶かしたあとも私は普通に働いて、また貯めていました。

私を止めていたのは、金額の大きさではなかった。失敗したら終わりだと思っていたことでした。そこが外れた、というのが一番近い気がします。

私が選んだのは個別株ではなくインデックス投資

その後いろいろ調べました。当時はYouTubeで投資の解説を見漁っていた時期で、そこで繰り返し出てきたのが「長期で見れば、よっぽどのことがない限りマイナスにはならない」という話です。

仮に大きなマイナスになったとしたら、世の中の投資家もみんな同じことになる。それは経済の破綻を意味します。そんな状況を、国や金融機関、投資家たちが許容するはずがない。だから、そんな方向に大きく動くことはないだろうなと思いました。実際、投資とは人類がこの先も成長することに賭ける行為であり、人類が衰退するという前提で投資をする人はいません。だから、長期で見ればマイナスにはならないだろう、と。

そして、調べた結果として出た結論は、個別株で当てにいくのではなく、長期でインデックスを持つ。派手さはありませんが、自分にはこちらのほうが合っていると思いました。

ちなみに、友人がやっていたのは個別株です。私が選んだインデックスとは、考え方がまったく違います。個別株で2,000万円という結果は、その友人がリスクを取った結果であって、誰にでも起きることではありません。一方、インデックスは長期で持ち続けることで平均的な成長を狙う手法です。

もうひとつ、決める前にやったことがあります。将来いくらになるのかを、自分で計算してみたことです。手元の資産をどの商品にいくら割り当て、それぞれ何パーセントで回ったらどうなるか。表計算ソフトで組んで眺めていました。この話は長くなるので、別の記事であらためて書きます。

現金1年分を残して、残りは投資へ

2021年1月。当時の資産は 1,200万円ほど でした。

つみたてNISAの枠は年40万円しかありません。本気で増やすつもりなら、枠の外でも買うしかない。そう思い始めました。決め手になった理由は2つ。ひとつは「全部なくしても、仕事があれば生きていける」。もうひとつは「現金のまま置いておくぐらいなら、配当が入る資産にしたい」。

そこで米国ETFを本格的に買い始めることにしました。

手元に残す現金をいくらにするかは、当時の生活費が 月20万円 くらいだったので、その1年分。つまり 200〜300万円 を手元に置いて、それ以外を投資に回しました。

リスクの取り方は人によって異なる

同じ判断が誰にでもできるとは思っていません

私の場合、仕事に縛られない自由を手に入れるために投資をして資産を増やそうとしているのに、「お金が無くなったら働けばいい」という考えは矛盾しているようにも思います。しかし、その自由を手に入れるためにはある程度のリスクは受容すべきであり、それができるのは今しかない、そう思ったからこそ動きました。

当時の私は独身でした。車はすでに持っていて、家を買う予定もない。そして仕事があって、収入は安定していました。大きなリスクを取れる状況が揃っていたという状況でした。

条件が違えば、考えることは変わります。

「平均」を見ても、自分の答えは出ない

こういうとき、つい他の人がどうしているかを知りたくなります。私もそうでした。

ただ、統計を見ると考えが変わります。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額は平均 1,940万円、中央値 720万円。同じ調査の同じ人たちで、倍以上の開きがあります。

平均は、一部の大きな数字に引っ張られます。平均を自分の目標や基準にすると、実態からずれます。「みんなはどれくらい投資しているのか」を調べても、自分がいくら回していいかの答えにはなりません。

引き算で考える

結局のところ、投資に回せるお金は足し算ではなく引き算で決まります。私がやったのも、順番としてはこれでした。

私の場合、1で外すものが何もなく、2は生活費1年分と決めました。だから3が「ほぼ全部」になっただけです。大胆な決断ができたのは、引くものが少なかった、というのが実際のところです。

その後の2年間、やったのはホールドだけ

全部入れたあと、私がやったことはほとんどありません。ボーナスが入るたびに、また投資に回す。それを繰り返しただけです。

このとき葛藤があったかというと、あまりありませんでした。使いたいものが特になかったのもありますが、それ以上に資産を増やして自由を手に入れたいという気持ちのほうが強かった。だから我慢して積み立てていたというより、進んでそちらに向かっていた感覚に近いです。

途中で試練もありました。2022年2月のウクライナ侵攻です。全部入れた直後の本格的な下落で、正直ひやっとしました。ただ、1か月ほどで回復していくのを自分の口座で見て、「やっぱり戻るよな、これが投資世界の妙だな」と腑に落ちたのを覚えています。その後も何度も同じような動きを経験し、徐々に慣れていきました。値動きにビクビクしなくなっていく過程は、それだけで長くなるのでまた別に書きます。

そうやってボーナスのたびに買い足しながら持ち続けて、2023年の3月には資産が2,000万円に届いていました。特別なことは何もしていません。

ここは正直に書いておきます。この2年間は、相場の追い風がありました。私が特別うまくやったわけではなく、環境が良かった部分は間違いなくあります。同じことを同じタイミングでやれば同じ結果になる、という話ではありません。下がる時期に当たっていたら、この記事の温度はまったく違っていたはずです

まとめ:あなたのブレーキは、何でできているか

私が動けなかった1年と、動けた1年の違いは、「失敗したら終わりだ」と思っていたのが、「失敗しても働けばやり直せる」に変わっただけです。

もし今、同じところで止まっているなら、自分のブレーキが何でできているかを確かめてみてください。

金額の大きさが怖いなら — 一度、紙に書き出して整理してみる

全部を動かす必要はありません。私も最初は月数万円からでした。使う時期が決まっているお金を外して、生活防衛資金を残す。残ったぶんの中でだけ考えれば、金額は自然に決まります。私の場合は引くものが少なかったので、結果的に大きくなっただけです。

「失敗したら終わり」と感じているなら — 終わったあとを具体的に考えてみる

私はFXで100万円を溶かしましたが、そのあとも普通に働いて、また貯めました。働いて収入がある限り、それは終わりではありません。ここが腹に落ちるかどうかが、私の場合は一番大きかったです。

今のままで十分だと感じているなら — 無理に動かなくていい

現金で持っておく安心を選ぶのも、ひとつの判断です。私が全部入れられたのも、独身で大きな出費の予定がなく、収入が安定していたからで、条件が違えば同じ選択はしていないかもしれません。現状に満足しており、現金を手放すことで精神衛生上の不安が増す人は、無理に投資するべきではありません。

動くか動かないかを決めるのは、それからでも遅くありません。

※ 本記事の利用にあたって

  • 本記事の情報は執筆時点(2026年7月)のものです。つみたてNISAは2023年で新規購入が終了しており、現在は新NISAに移行しています。制度の最新情報は金融庁の公式サイトでご確認ください。
  • 本記事は筆者個人の体験を書いたもので、個別の金融商品の購入・契約を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
  • 本文中の判断は、当時の筆者の状況(独身・大きな出費の予定なし・安定した収入)と、結果的に相場の追い風があった時期に基づくものです。同じ選択が同じ結果になることを保証するものではありません。
  • 個別の資金計画(生活防衛資金・保険・税金など)が必要な場合は、ファイナンシャルプランナー・税理士などの有資格者にご相談ください。
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