「いつ辞めてもいいんだ」と言えるようになった資産水準の話

「また月曜日か…」ではなく、私の場合は「また春か…」でした。年度初めのころは会社がいちばん忙しくて、その時期になると朝、家を出るのが本当に憂鬱になります。そんな朝、心の中でこっそりつぶやく呪文があります。「いつ辞めてもいいんだ」。この一言が言えるようになってから、仕事との距離が少しだけ楽になりました。では、いくら貯まったらそう思えるのか。私にとってのひとつの答えが5,000万円でした。ただ、これはよく聞く「5,000万円でFIRE」とは、少し違う話です。

- 4%ルールで見たとき、5,000万円がどれくらいの金額なのか
- 5,000万円が”ゴール”ではなく”通過点”だと私が考える理由
- 完全なFIREを待たなくても、心の余裕は先に手に入るという話
「5,000万円でFIRE」って、本当にできるの?
YouTube を開くと、「5,000万円あればFIREできる」という動画がたくさん出てきます。私もついつい見てしまいます。根拠としてよく出てくるのが4%ルールです。
4%ルールは、ざっくり言うと「資産を株式などで運用しながら、毎年その4%ずつを取り崩していけば、資産はそう簡単には尽きない」という考え方です。もともとは米国のファイナンシャルプランナーが1994年に出した研究がはじまりで、その後トリニティ大学の研究(1998年)でも、過去の米国データでは高い確率で資産が枯渇しなかった、と裏づけられました。あくまで過去のデータから導かれた経験則ですが、FIREを語るときの共通言語になっています。
これを5,000万円に当てはめると、こうなります。

5,000万円 × 4% = 年200万円。月にならすと約16.7万円。ひとりなら、まぁ、食べていけなくはない金額です。でも、ぜいたくはできません。これだけで一生分かというと、正直こころもとない。
そしてもうひとつ、私には引っかかることがあります。仕事を完全にやめてしまうと、人はダメになると私は思っています。お金の問題だけじゃなくて、やることがなくなって、人と関わらなくなって、なんとなく気力も落ちていく。そういう自分が想像できてしまうんです。
だから私が欲しかったのは「働かなくていい自由」ではありませんでした。嫌な仕事を、無理して続けなくてもいい自由のほうです。やりたいこと、挑戦してみたいこと、好きなことで、細くでも稼げたらいい。それくらいの温度感でした。
それでも5,000万円で、心の重さが変わった
5,000万円は一生を保証してくれる金額ではない。それは分かっています。でも、この数字に届いたとき、心の重さははっきり変わりました。
いちばん大きかったのは、「給料が下がっても、別の仕事に移れるな」と思えたことです。今より条件の悪い会社になっても、細く稼ぐ働き方になっても、5,000万円という土台があれば、当面は暮らしていける。そう考えられるようになった瞬間、目の前の仕事が「絶対に手放せないもの」ではなくなりました。
不思議なもので、辞めるつもりはまったくないのに、「いつでも辞められる」と思えるだけで、仕事がぐっと気楽になります。「何かあったら、いつでも辞めてやるんだぞ。こっちは辞めても困らないんだぞ」——このくらいのメンタルでいたほうが、むしろ日々の仕事に落ち着いて向き合える。守りの土台があると、攻めの心にゆとりが出る感じです。
「いつ辞めてもいいんだ」が、しんどい季節の私を支えている
さきほど「また春か…」と書きました。私には、毎年決まって気持ちが落ち込む時期があります。年度初めの繁忙期です。一般的には、冬から春にかけては新しいことが始まる、希望にあふれた季節とされています。でも私にとっては、毎年いちばんメンタルが重くなる時期なんです。
実は以前、仕事でメンタルを崩してしまった時期がありました。そのころのしんどさが体に残っているのか、忙しさが重なると、朝、会社に行くのが本当に嫌になります。ソワソワして、理由もなく落ち着かなくなる。
そんな朝に、私を踏ん張らせてくれるのが、あの一言です。「いつ辞めてもいいんだ」。
この呪文が効くのは、ただの気休めじゃないからです。背中に、投資で積み上げてきた資産という裏づけがある。だから「いつ辞めてもいい」は、負け惜しみでも強がりでもなく、それなりに現実的な選択肢として言える。もしお金の余裕がまったくなかったら、私はきっと「無理してでも働かなきゃ」と自分を追い込んで、また同じように潰れていたと思います。
お金は、ぜいたくをするためだけのものじゃありませんでした。私にとっては、しんどい時期に自分を守ってくれる、心の保険でもあったんです。
私の本当のゴールは「完全FIRE」じゃない
ここまで読んで、「じゃあ5,000万円がゴールなのね」と思われたかもしれません。でも、私の中では5,000万円は通過点です。
私が最終的に目指しているのは、自分たちの生活費を、4%ルールの範囲内でまかなえる状態です。今、夫婦での生活費は月35万円ほど。単純計算だと年420万円で、これを4%でまかなうには1億円ちょっと。ただ、実際にはそれでは足りないと考えています。旅行みたいなちょっとしたぜいたくの余裕もほしいし、NISA以外の口座は取り崩すときに約20%課税されるし、会社を辞めれば社会保険料もかかる。これから物価も上がっていく。そういうものを見込むと、目安はもっと厚くなります。私の場合は、だいたい1.5〜2億円を最終目標に置いています。
| 資産の段階 | 私にとっての意味 |
|---|---|
| 5,000万円(今の通過点) | 給料が下がっても動ける。「いつ辞めてもいい」と思える心の余裕 |
| 1.5〜2億円(最終目標) | 夫婦の生活費+ちょっとの余裕を4%ルール内で。税・社会保険・物価上昇も見込む |
正直に言うと、今の会社は待遇が良いし、今就いている仕事はやりがいもあるので、当面は辞めるつもりはありません。もう少し働いて、1億円くらいまでは伸ばしたい。「辞められるけど、辞めない。でもいつでも別の選択ができる。」——この状態が、いちばん気楽だと気づいたからです。
もうひとつ、最近になって心を軽くしてくれたことがあります。AIの存在です。仕事でAIを使う機会があって、自然な言葉で指示するだけで、いい感じにデザインして、プログラムまで組んで、ツールが形になっていく様子を見ました。正直、「これはやばい」と思いました。細かい部分はAIに任せて、自分は「何を作るか」を考えることに集中すれば、ひとりでもそれなりに戦えるんじゃないか。そう思えたことで、「稼ぐ側」の選択肢も少し増えた気がしています。
自分がやりたい仕事を、自分の判断と責任で自由に進める。気が向かなかったら手を止めて休む。自分の好きな人とだけかかわりを持ちながら働く。そんな働き方を夢見ながら、せっせとアイディア出しやプログラムを作成しています。
資産という守りがあることで、AI副業という攻めの手段も考えることができるようになりました。

まとめ:お金は「辞めるため」ではなく「自由に働くため」
私にとってお金は、会社を辞めるためのものではありません。お金に囚われて、我慢して働き続けなくてもいい——そのための土台です。お金を敵にして怯えるのではなく、味方につけて、自由に働く。完全なFIREに届いていなくても、その心の余裕は、意外と手前で手に入ります。
5,000万円は「働かなくていい金額」ではなく、「いつでも動ける」と思える心の余裕をくれる金額でした。人によってそう思える金額は違うと思いますが、完全なFIREを待たなくても、少しずつ資産を積めば、しんどい仕事から自分を守る保険になります。お金を味方につけて、自由に働きましょう。
最後に、今のあなたの状況別に、次の一歩を置いておきます。

まだ投資を始めていないなら — まずは小さく試運用してみる
いきなり大きな金額を動かす必要はありません。私も最初は、こわごわ少額から始めました。NISAで毎月数千円でもいい。「増えるかどうか」より「値動きに慣れる」ことが最初の一歩です。数字が動く感覚を体で覚えると、次からがぐっと楽になります。
会社で消耗しているのに動けないなら — 自分の”下限”を数字で出してみる
「あといくらあれば、最悪しのげるのか」を一度、電卓で出してみてください。生活費の1年分でも、5,000万円でも、人によって基準は違います。“下限”が見えるだけで、目の前の仕事の握りしめ方がゆるみます。そのうえで、副業や転職も「逃げ道」ではなく「選択肢」として調べてみる。動くかどうかは、それを見てから決めればいい話です。
今の働き方に満足しているなら — それも立派な答え
無理に何かを変える必要はありません。今の暮らしに納得できているなら、それが一番です。ただ、頭の片隅に「お金は、いざというとき選択肢を増やしてくれる」ということだけ置いておくと、いつか役に立つ日が来るかもしれません。
動くか、動かないか。それを決めるのは、自分の”数字”を一度見てからでも、遅くはありません。
※ 本記事の利用にあたって
- 本記事の情報は執筆時点のものです。4%ルールなどの数値は過去データに基づく目安であり、将来の成果を保証するものではありません。
- 本記事は個別の金融商品の購入・契約を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
- 個別の資金計画(FIRE資金・税金・社会保険など)が必要な場合は、ファイナンシャルプランナー・税理士などの有資格者にご相談ください。
- 詳しくは免責事項をご覧ください。



